君とおそろい?

 きっかけは、いつものコレットのドジだった。

 ただこけた場所が川のすぐ側で、
 服がびしょびしょになって、
 慌てて着替えなければならなくなった、というだけで。


「あーあ、何やってんだよコレット……」
「えへへ、ごめんね?」

 いつものように笑う幼なじみを見おろして、ロイドはここと家の位置関係を考えた。
 コレットの家は、森を一つ越えた先。
 対して自分の家は、川をたどっていけばすぐ近く。
 ならば、と彼はきびすをかえした。


「ロイド?」
「ちょっと待ってろよ……着替え持ってくるから」

 その様子を見ながらロイド君てばやるじゃん、とゼロスは感心した。
 どこまでも鈍いこの田舎の少年は、誰にでも優しい。
 彼に好意を抱いているなら、相手に嫉妬しそうなくらいに。
 だから、内心やきもきしているに違いない彼女に、からかいの声を投げた。


「……うらやましいんだろ、しいな」
「あ、あたしは別に……!」

 照れるなよ〜と茶化してくるアホ神子に、しいなは反射的に否定の言葉をかえした。
 こいつはへらへらした言動がほとんどのくせに、
 いつだって自分よりもはるかに大人びた顔をする。
 あたしはそんなんじゃないってば!と言おうとして、やんわりとたしなめられる。


「駄目だよ〜、しいな。自分の気持ちに嘘ついちゃ」

 いつのまにか、コレットがこちらを向いて笑っている。
 袖や裾からぽたぽた水が垂れているのはご愛嬌だ。
 コレットの言葉を受けて、得たり、とゼロスが頷いた。


「そうそう。正直に生きようぜ?」

 ……その顔には、なんともいえない笑みが浮かんでいて。
 ふと、しいなは思い出した。

 応援するね、といいつつお節介としか思えない行動をするコレット。
 同じく頑張れよ〜といいながら面白がっているのは明らかなゼロス。
 ――このふたりが関わるとろくなことがないんだと。

 そんなことを考えている間にも、ゼロスと自分の距離は詰まっている。


「ちょっこら待ちなよアホ神子押すんじゃないって――!」


 そんな、しいなの悲鳴の後に
 ばしゃん、と大きな音がして。



「ロイド君〜。着替えもう一枚追加な〜」

 何やってんだよお前ら、と言いながら木々の向こうから顔を出したロイドに、ゼロスは枚数の変更を告げる。
 予想しない声が聞こえたのは、次の瞬間。


「ちがうよ、あと二枚だよ?」


「……えーと」
「なに、ゼロス?」

 にっこりと満面の笑みを浮かべながら、声の主――コレットはゼロスに向かって腕をのばす。


「……何かな〜コレットちゃんその手は。てか今にも突き落とされそうなんですけど俺さま」

「自分の気持ちに正直に生きなきゃね〜」
「おーけーおーけー。分かった、分かったからとりあえずその手を下ろし――」


 ばしゃん、と。
 大きな音がもう一度。





「……何だってこんなことになっちまったんだい」
「……俺さまも誰かに訊きたいよ」

 ぶつぶつとぼやきながら、歩くのはしいなとゼロス。

 二人揃って同じデザインの真っ赤な服――ロイドから借りたもの――を着ているので、かなり目立つ。
 さらに二人の少し前には、これまた同じ服を着たロイドとコレットがいるので更に目立つ。


「ゼロスもしいなも、遅いよ〜」
「……あーコレットちゃん、俺さま意外に奥ゆかしいから後で合流」

 するわ、と言いかけたゼロスは、けれど言葉の途中でしがみつかれて止められる。

「ばらばらになっちゃったら、おそろいに見えないでしょ?」

 そのままぐいぐいとゼロスを引っ張っていくコレットは、もう片方の手でしいなの腕もつかんでいて。


「ほらほら、しいなも!みんなでやったら楽しいから!」
「……そういうもんかあ?」
「そうなんだよ?」

 ……神子ふたりの、そんな会話を聞きながら。



 まあ確かに、皆でいるほうが恥ずかしくはないかもしれない。




 ロイドのほうに歩き出して、しいなはそう思った。

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間接的にゼロスとおそろい(←動機)