ねがう、ものは

 消えていく命の灯を前にして、教え子が動けなくなることは分かっていた。
 わたしが言わなければいけない言葉も、分かっていた。



「行きましょう、ロイド」
「……先生?」

 ロイドの腕の中で、赤い髪が揺れる。
 共に戦い、旅をして、わたしたちと親しくなっていたはずの、
 わたしたちに刃を向けた、ゼロス。


 私は、あなたを救えない。
 だから、
 せめて、
 あなたの望みどおりに、振舞ってあげましょう。


「立ち止まらないで。嘆きも、悔やみも、今は無意味だわ」
「…………わかった」

 囁くような声で告げて、ロイドはゼロスを横たえる。

「わかったよ。――行こう、先生」



 ありがとう、とゼロスは言った。
 言う必要のない言葉を、最後の最後に口にした。


 わたしはきっと、誰よりもあなたの望みを知っている。
 立ち止まらないで。
 前を向いて。
 それから――……


「ありがとうなんて、言わなくてもよかったのよ。ゼロス」

 最後の願いは、『忘れて』



「わたしはあなたの最後の願いを、叶えるつもりなんかないのだから」







 この長い長い生を、あなたの記憶と共に。

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