奈落の底

 泣いたり、責めたり、詰ったり
 そんな醜態、さらせない。

 ……そんな私は、許せない。




 一枚一枚落ちていく、足元のパネルをみつめながら自嘲した。
「こんな時まで……私は教師のままなのね」

 彼の裏切りがわかっても。
 もうじき、たった一つ残ったこの足場も崩落するのだとしても。

 泣いたり、責めたり、詰ったり、そんな姿は見せられない。
 私自身が、そんな自分を許せない。

 だから静かに、その時を待った。
 奈落の底に待つのは、きっと――。





「うるわしの神子さま、華麗に登場〜ってな〜」


 声が、聞こえて

 目を開けて

 鮮やかな羽の色が彼らしくて、笑みがこぼれた。



「――遅いわ、ゼロス。ぎりぎり及第点よ」

「……相変わらずだね〜、リフィル先生。
 颯爽と現れた俺さまに優しい言葉でもかけてくれるかな、なんて期待してたんだけど?」
「そんなこと、あるわけないでしょう」

「……俺さましょんぼり」
「言ってなさい」



 信じてた、とか

 戻ってきてくれて、嬉しい、なんて


 言ってあげるわけがないでしょう?








 ……言ってしまったら、きっと泣いてしまうのに。

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