かけらの石

 ごめんね、って、しいなが言った。
 こんなものしか、持ってこれなくて、ごめんね、って。

 てのひらには赤い石。
 ゼロスの胸で光ってた、輝石のかけら。


 せめてこの石の中にくらい、残しててほしかった。

 ああ、それともしあわせだったのかな。


 ゼロスがどこにもいないから、

 ゼロスのためには狂えない。







 ねえミトス、わたしとあなたはそっくりだよ。

 そんなときがわたしには来なかった、それだけで。


 狂ってしまったあなたと、狂えもしなかったわたし。

 どちらがしあわせなんだろう。



 ねえミトス、わたしはあなたを止めるよ。

 世界のためなんかじゃなくて、しあわせになれたかもしれないわたしのために。


 あなたのマーテルがよみがえるのなら、

 わたしのゼロスがよみがえってはいけない理由は、たぶん、ない。


 もし石が壊れていなくても、そのための力をもっていても

 よみがえりなんてできっこないって、証明するの。


 壊れたゼロスの石と、ちっぽけな力しかもたないわたしが

 よみがえらせてあげられないことを、悔やまないために。







 そのためにミトス、


 わたしはあなたを止めてみせるよ。

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