やさしいひと

「ねえゼロス、ここだったよね?わたしたちがはじめて出会ったの」

「そ。ちゃんと覚えてくれてたんだ?俺さま感動〜」

「…………うん。おぼえてるよ」






「……いい加減、あきらめてもいいと思うんだけど」
 あきれたみたいに、ジーニアスが言った。

「や〜、そう簡単にはいかないっしょ」
 そう言ったのは、ゼロス。当事者なのに、いちばん落ち着いてる。

「あれだけ返り討ちにしたのに?」
「神子が反逆罪で逃走、なんて、
 誰はばかることなく追っ手を差し向けられる絶好の機会そうそう――」
「あるわけないか」
「そーいうこと。察しが良くて助かるぜ、がきんちょ」

「まったくもう……ボクたちまで巻き込まないでよねっ!」
 ふたりの足元に、浮かび上がる魔法陣は――紫。


 雷の――

「ライトニング!」
「サンダーブレードっ!」

 ――呪文は、開放されて教皇騎士団におそいかかる。


 剣を抜きながら、ゼロスが、こっちをみて言った。

「――コレットちゃん。目、つぶってな」

「なんで?わたしも手伝うよ?」
「駄目。あれっくらい俺さまとがきんちょで十分なの。
 かわい〜コレットちゃんは、こんなの見なくていいんだよ」


 ――ボクにはやっぱり手伝わせるくせにさー。

 ――野郎はどーでもいいの。プレセアちゃんを守るんだろ〜?頑張れよ〜。

 ――……っそれ今関係ないじゃない!



「……ふふ」

 ふたりの声が、かすかにきこえて。
 いつのまにか、わたし、笑ってた。



 ……ゼロスはやさしいね。












 ねえゼロス、ゼロスはやさしいね。
 わたしに見せたくなくて、わたしのいない時まで待ってくれて。

 でもね、ゼロス。

 わたし、ほんとうは、おぼえてないの。はじめて出会ったときのこと。
 あとでロイドやジーニアスに聞いて、そうなんだ、って、知ったんだよ。

 ねえゼロス、やさしいゼロス。
 わたし、はじめてもお別れの記憶も、ないままだよ。


 ゼロス、わたしね。

 つらくてもいいから、あなたをおぼえていたかったよ。
 最後まで、いっしょにいたかったよ。


 ねえ、まだ聞こえてる?












 ゼロスはやさしいひと。


 ……だけどいちばん、ひどいひと。

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