この恋に敗者はいない

「しいな。お前ちょっと、ロイド君とこ行ってこいよ」
 え?としいなが目をまるくした。

「色々あって、落ち込んでるだろーからさ」
「ああ――そうだね。コレットも誘ってみるよ」
「まてコラ。しいなの株あげる折角のチャンスだろ〜?」
「なっ……何言ってんのさアンタ!」
「どーせ、まともにアプローチもしてないんだろーが。ここらで抜け駆けでもしないと分が悪いぞー」
 ロイド君のこと好きなくせに〜、と言ってやったら黙り込んだ。

「……裏切ってるみたいで、サ。嫌なんだよ」

 裏切ってるみたい。
 多分それは、同じようにロイド君を好きなんだろうコレットちゃんのこと。

 ――……でもなあ。

「馬鹿しいな」
「……何だってんだい」
「恋愛にフェアもアンフェアもねぇよ。卑怯者もいない」

 どんなに狡くても、しょうがない。
 卑怯者も裏切り者も、いやしない。
 代わりに勝者と敗者の別は、厳然とあるけれど――こいつにそこまで言う必要はないだろう。

「アンタが言うと、妙に真実味があるから不思議だよ……」
 少しだけ、肩の荷を降ろした表情でしいなが言う。

「俺さまはいつも本当のことしかしか言ってないからな〜」
「……よっく言うよ、このアホ神子」



 笑いながらロイドのところに向かうしいなを、廊下で見送った。

「健闘を祈ってるぜ〜」
「……なにしてるの?ゼロス」

 え。
 ……あれ?

「こ、コレットちゃん!?どうしてこんなとこにいるのよ!」

「お土産屋さんで、おまもり見てたんだ〜。
 アルテスタさんにあげようと思って。ロイドにも渡してこようと思ったんだけど……」

 にこにこ、にこにこ。
 そんなかんじに、コレットちゃんは笑っている。

 この笑顔が曲者なんだよなあ。
 俺のものとは違うけど――その奥に別の感情を隠してる、ってところはおんなじで。

「……でもしいなに先越されちゃったみたいだね〜」

 ああ要約するなら余計なことしやがってこのヤロウ、って感じですか?
 でもほっとけないじゃんあの不器用娘。多分後押ししなかったら行動起こしてなかったぞあいつ。

「えーと、ごめん」
 まあコレットちゃんのためにならないことをしたのは本当なので、謝っておく。

「んー……ゼロスはわたしに悪いことした、って思ってるの?」
「うん」

「じゃあ代わりに、わたしのお願いきいてくれる?」
「…………内容にもよるけど」

「だいじょぶだいじょぶ、簡単だから」
 ぱたぱたと手を振って、コレットちゃんは続けた。


「じゃあ言うよ?わたしのお願いはねー……」




「……騙された」

 言うともなしにつぶやくと、だましてないよ〜とコレットちゃんが言い返す。

 ……だって詐欺じゃんアレ。
 実はコレットちゃんの好きなひとはロイド君じゃなかったのです、って?

「だってそもそも俺さまがしいなの恋に一肌ぬぐ必要もなかったわけでしょ?」
「そうだよー」

「その上俺さまがコレットちゃんに後ろめたさを感じる必要もなかったわけで?」
「そういうことになるねえ」

「わざわざコレットちゃんに『お願い』されることもなかったわけでー……」
「わたしは嬉しかったよー。ゼロスがネギしょって来てくれてー」

 ……カモネギですか、俺さま。複雑だ。

 あ、しいなが走ってく。
 向かう先にはロイド君、だろうな。

 空は青いし、
 いい陽気だし……。

「……まあ、敗者のいない恋愛ってのは、悪くねえよな」



「ゼロス、何かいった?」
「いや、なーんにも――」











 『あのね、わたしね、ゼロスが好きなの。……だから、つきあって?』

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……うちのゼロス君はやたらと流されやすい人です。騙されてるよと誰か言ってやってください。
ちなみにこれフラノールイベントなので、翌日のあれやこれやでお願いが三倍くらいに増えたんじゃないかなと。