イツワリのイタミ

 痛くはないんだ。
 苦しくもないんだ。

 だから、気付かせないで。

 気付いてしまったら、歩けないから。




「俺さまいっちばーん!俺さまカッコイ〜!」

「置いてくよー、アホ神子」
「っこら待てがきんちょ、無視かよ無視!」


 そう言って駆け出そうとするゼロスを、ロイドが止めた。

「お前怪我してるじゃないか」

 見れば薄桃色の上着に、血の赤が滲んでいて。
「へえ、気付かなかったわ。ありがとロイド君」


「気付かないなんてことあるか。……まさか、さ」
「まあまあ。天使化とかじゃないから安心しろよ。痛くねえだけ」
「それが、心配だっていってるんだよ」


 血を流しても、平気な顔で振舞う姿は。
 この前までのコレットにそっくりで――。


「そうは言ってもねえ。……痛みを感じたら、動けなくなる気がしないか?」
「……は?」

「頼れるのは自分ひとりって時に、動けなくなったらおしまいだろ?」


 ――俺さま神子ですから〜、ちっさい頃から刺客やら暗殺やらのオンパレードだったわけよ。
 いつだったか、ゼロスが冗談めかして言った言葉。


 その言葉が本当、だとしたら。

 ……本当、だとしても。


「……そうだとしても、今は先生もリーガルもいるんだからな」
 ロイドはぐい、と顔をあげて、一番言いたい言葉を告げた。






「――さっさと回復してもらって来い、馬鹿野郎!」

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心身問わず自分の痛みには果てしなく鈍感だと思います、ゼロス君。その分他人の痛みには敏感ぽいけど。
ちなみにロイド君は天性のお節介。