神子の休息

「姉さん、コレット知らない?」
「さあ、見なかったけれど……ゼロスのところではないの?」

「…………またぁ?」
 ぼやきながら、ああいつものアレだと察知する。

 深呼吸して、1、2、3。

 直後、キャンプの端っこから大声が聞こえてきた。

 それも――『ゼロスなんて大っ嫌い!』……という、コレットの。



 よくも飽きずにやるものだと、ジーニアスは思う。
 毎日毎日ケンカして、それでも翌日になればふたり一緒にいるのだ。
 天才十二歳児には……ちょっと、理解できない。







「……お前も本っ当にこりないよなあ」
「その言い草は何かな、ロイド君」

「や、よくあれだけ怒らせるもんだなってさ」

 コレットあんまり怒ったりしないからさ――。
 そう言いながら、ロイドの右手はさくさくと野菜の皮をむいている。

「言い出しっぺはコレットちゃんなんだぞ」

「ふーん。そうなのか?」
 かえってくる言葉は、おざなりなもので。

「……俺さまの話聞いてないでしょ、ハニー……」
「聞いてるって」



 正直意外な展開だと、ロイドは思っている。
 いつもにこにこ優しく笑って、それがコレットのパーソナリティだと思っていたのだけれど。
 ……ちょっと、かなり、実情は違うらしい。







「……コレットさんは、ゼロスくんと一緒だといつもと感じが違いますね」

「えと、ごめんね、驚かせちゃった?」
「いえ。それより、先を急ぎましょう」
「そだね〜」

 本日の食材調達係――傍目には可愛らしい少女ふたりは、そう言ってお互いの武器を手にした。



 ちなみにプレセアは、この件に関しての結論は出していない。
 確かにゼロスと一緒にいると、コレットの雰囲気はかわるのだけれど。
 だからどうした、と言われると……ちょっと、答えづらい。







「……どうして私は鍋を使わせてもらえないのかしら?」
「……しょうがないことだと思うのだが……」

 リフィルの料理はある意味、凶器とかわらない。

「練習しなければ上達するものもしないでしょう」
「ではまずおにぎりから始めてもらおう」
 そう言うと、悔しそうに頷いた。

「……わかっていてよ」



 日々繰り返す日常の一こまだと、リーガルは思うことにしている。
 リフィルが料理をしたいと言い出すのと同じくらいの、「いつものこと」だ。
 ただし、頻度はかなり多いのだが……その辺りはちょっと目をつぶっている。







「言い出しっぺって、どういうことなんだい?」
 しいなが問い掛けると、ゼロスは包丁を止めてこちらを向いた。

「ん?なによいきなり」
「アンタが言ったんだろ。コレットが言い出しっぺとかなんとか」

「ああ、神子やめような〜って話?」
「へえ?」

「ずうっと神子やってんのも疲れるからさ〜、お互いの間で神子ごっこはナシってことになったんだよな」

「…………ふうん」



 いいことなのではないかと、しいなは考えている。
 神子でいつづける事の苦しさは、自分なりに分かっているつもりだから。
 まあ、連日のケンカはちょっと……勘弁して欲しいけれど。







「……姉さんの料理って、ある意味才能だよね」
 たかがおにぎりでどうしてここまで個性的な味が出せるのか。

「何か言ったかしら、ジーニアス」

「あ〜でもホラ、大分上手になったんじゃねえ?」
「そうだよね〜塩もばらついてないし」

 いいタイミングでフォローを入れながら、ゼロスとコレットはおにぎりを口にする。

 このふたりは、時々本当に似ているなあと思うのだ。

 ささやかな優しさや、周りに気を使いすぎるところなどが。



 だから、こんな関係が続けばいいとリフィルは願っている。
 神子ふたりの「休息」を、
 ……ちょっとだけ、微笑ましく思いながら。











「まだ沢山あるのよ。どんどん食べてね」

「……リフィル先生、それはちょっと……」

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みこみこ前提、いつもの日常。
書いてて一番楽しかったのはリフィルとリーガルのお料理教室。