片翼

 我が最愛の片翼よ、と
 呼んだお前は
 もう側にいない。


 空中庭園の真ん中に、それはあった。
 すべらかな石、陽光の下にある墓標。
 膝を付き、指先でなぞっていく――ここに眠る少女の名前。

「……アリシア」
 その下にはいびつな窪みがある。
 彼女の心をこの世に繋ぎとめていた石を、壊したのは自分だ。
「……すまない」
 詫びをいう。
 彼女の身体を壊した事。
 彼女の心を壊した事。
 それから、
「私は、片翼を見つけてしまったのだ」
 彼女を――自分の心から、消してしまう事。


「……リーガルさん」
「プレセアか」
「はい」
 プレセア――アリシアの姉である彼女には、前もって伝えてあった。
「忘れてしまうのは……無理も無い事だと思います」
 私たちは生きている者だから。
 私たちは幸せを探し続けてしまうから。
「その人は、アリシアに似ていますか?」
「……いや」
 自分でも、考えたけれど。
「いや、アリシアとは――似ていない」
 そうですか、と彼女は言った。
 アリシアの影を追うのなら許さないつもりでしたけれど、と。
 笑って、言った。


「お幸せに――リーガルさん」

>>Back

はじめてのシンフォニア。……それでどうしてリーガルさんなのかと自問自答。
彼には是非幸せを見つけてほしいと思います。