ジェイドありえない表情5題・慌て顔
「なあジェイド。そろそろお前も身を固めないといけないんじゃないか?」
ある日突然、マルクト皇帝陛下である親友はそうのたまった。
愛するペットの一頭に、彼自身の手でブラッシングしていた時のことだ。
「心配するな、すでに候補はしぼってるんだ。最近お前が気にかけてる、あの――」
「……陛下」
「なんだ、可愛くないほうのジェイド」
「私の目の前でその四つ足に甘ったるい言葉を吐くのはやめてくださいね」
……私でないものに対して名前を連呼されるこっちの身にもなっていただきたい。
そう言ったところで聞き届けられないのは分かっているので、口には出しませんが。
「……ジェイドの恋路が気になるかー?可愛くないジェイド」
「いいえ。全く」
四つ足のジェイドは宮殿内で大事に飼われているのだろうし、
だとすれば同じ陛下のペット――ネフリー、ゲルダ、アスラン、サフィール、ああルークというのもいましたか――の内のどれかなのだろう。
仮にも私の名前をもつ四つ足を、妹や先生と同名のそれと娶わせる気ですかこの馬鹿は。
けれど、その馬鹿の次の発言は、ある意味予想を超えていた。
「……なージェイド、お前、ルーク好きだよなー」
ごろごろと喉を鳴らしそうな勢いで、気持ち良さそうに四つ足の背中を撫でながら彼はそう言った。
「……は?」
「珍しい赤毛だろ?あっちのルークも赤毛だし、ぴったりだと思ってな。名前を付けたんだが」
「…………それで?」
嫌な予感をねじ伏せて、先をうながす。
まあ大体予想はできますが。
「後でよーく見てみたら雌だったんだな、これが」
「馬鹿ですか貴方」
ひでえなあ、と全然堪えていない様子で馬鹿(もう陛下と呼ぶ気も失せた)が笑う。
「最近ジェイドはルークが気になってしょうがないみたいでな。
ルークのほうも満更じゃないようだし、いっそのこと夫婦にしてやろうかと」
「……誰かに聞かれたら誤解されるような喋りかたはやめてください」
「だからどこで何を言おうと俺の勝手――」
「消し炭にしますよ?」
しばらくの間、グランコクマ(というかこの馬鹿の私室)には仲間たちを寄せ付けまい。
……それだけを、私はかたく決意した。
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誰が四つ足ジェイドと仲良くなるのが一番衝撃的か、と考えて赤毛の子どもに。
ネフリーさんでも良かったのですが陛下が邪魔しそうなので……。