猫かぶりの恋

「もー、イオン様ったらしっかりしてくださいよー」
「すいません、アニス」

 イオン様を馬鹿にしていいのはわたしだけ。



「ルークってさ、ほんっっとうに馬鹿だよね」
「…………うん。ごめんな、アニス」

 ルークをいじめていいのもわたしだけ。



 ……だから今のこの状況は、むかつく以外の何ものでもない。






「あーもールークの馬鹿!また余計なことしてー!」
「……ご、ごめん」

 わたしの言葉に、ルークは居心地悪そうに目を伏せた。

 いつものようにわたしたちは旅の途中で、
 いつものようにモンスターと遭遇して、
 これまたいつものようにわたしは譜術を詠唱してて。

 ちょっとだけいつもと違ったのは、そんなわたしをかばってルークがケガをしたってこと。


 良かれと思ってしたんだろうなってことは、分かるんだけど。
 そうされて喜ぶアニスちゃんかどうか、そこのところまで考えてて欲しい。


「もういーよ。ほらナタリアのとこ行って、ケガ治してもらってきて」
「え、でも、全然大したことない――」
「いいから!言われたらさっさと動く!」
「う、うん」



 後列に下がっていくルークにため息ひとつ、右手のワンドを一回転。
 トクナガの頭に両手を固定して、食えない大人に声をかける。

「大佐ー、アニスちゃん本気でいきますけど、いいですかぁ?」
「どうぞ、ご自由に。見ない振りしてあげますから」
「ありがとうごさいます☆……――んじゃさっそく」


 イライラは既に限界値。
 リミッターは簡単に吹っ飛んで。





「ヤロー、てめー、ぶっ殺ーす!」

 とってもレアな掛け声が、フィールドにこだました。

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何か間違えた気がするアニス→ルーク。
……うちの片想い女性はどうしてこうもアグレッシブなんでしょうか。