わがままをきいて
「なあジェイド。何かないか?欲しいもの、とか、して欲しいこと、とか」
そんな風に彼が言ったのは、旅の終わりが見えた日の夜。
「どういう風の吹き回しですか、ルーク」
彼がわざわざそんなことを訊くのは珍しい。
問いかけに問いかけでこたえると、気にした風もなく彼が言う。
「んー……お礼がしたくて、さ。
ジェイドには色々助けてもらったし、あの事もみんなに黙っててもらってるし」
「――――」
黙っておくしかないでしょう。
言ったところで、どうなるものでもありません。
なにより死にゆくはずの貴方が、そう望んでいるのですから。
「だからさ、何かないのか?欲しいもの、とか、そういうの」
「そうですねえ……」
「うん」
彼はおとなしく、私の答えを待っている。
少しの間ためらって――心を決めた。
「では私のわがままを聞いてください」
「わがままって、どんなことだよ」
「――……いえ、今はやめておきます。また今度、教えてあげますよ」
「あのな……まあいいや。
でもちゃんと言ってくれよ。――俺が消える前に」
「……ええ」
「貴方は変わりましたね、ルーク」
私の言葉を、彼は神妙な表情で聞いている。
それでもどこかぼんやりしているのは、ローレライの解放とその後に訪れる死を思っているからなのか。
……ひとの話はちゃんと聞くようにと、私もティアも言ったのですがね。
「ですが貴方の罪が消えるわけではない。だからこそ」
ほら、ちゃんと聞いていないと、大事なことを聞き逃してしまいますよ?
「――戻ってきてください。いえ、そう願います」
彼にだけわかるように、含みを持たせた言葉。
予想通りに、彼が目をまるくした。
「……無茶言うなよっ……」
「――すみません」
これは私のわがままです。
拒否権なんて、ありません。
楽しみにしてますよ、ルーク。
――私のわがままを叶えてください、ね?
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……わがままを言ってるのが大佐ってのが、そこはかとなく嫌なのですが。