死霊使いはあざ笑う

 その目の奥にあるものは、焦り混じりの渇望だった。

 ……なんてたやすい、と、心のうちでほくそえんだ。




 ここは、自らが作り上げた秩序の及ばないところなのだとユグドラシル――クルシスの頭領は、さめた頭で考えた。
 運命の気まぐれか、想いのなせる業なのか。
 果ての見えない何もない空間に、やがてもう一人があらわれる。

 等しく禁忌に触れた者だ。
 それでいて、望むものには手が届かなかった者だ。


「わたしはお前の理論がほしい。代わりにお前に輝石をやろう」
 そう言って、手を差し伸べた。
 その先にあるものは、焦りの浮かんだ紅い目だ。

 自分には、無限と呼べる時間がある――だがこの男にはそれがない。
 だから、この先を、彼の選択をユグドラシルは予感していた。


 静かに彼は目を伏せる。そして。

 ユグドラシルと同じ――酷薄な光を浮かべた目をして、
 さしのべられた手に触れた。



 ふと、
 無色の空間が、色彩を帯びた。


 鮮やかな朱色――次いで翡翠の色に変わる空間をとらえて、血色のまなざしが、その質をかえる。

 応じるように召還の力が働いて、彼自身とユグドラシルをあるべき場所へと連れ戻そうとする。

 ゆらぎ、まざり、薄れる視界の中で

 憐れむように、あざけるように――彼は最後に、笑みを浮かべた。






「ユグドラシル様、お呼びですか――っと」
 呼び出された神子――ゼロスは、空気を察して口をつぐんだ。

「お前は、どれ程生きるのだ?」
「はぁ?」
「答えろ」
「……そんなに長くないでしょうよ。神子ですし」

 人も、エルフも、狭間の者も
 いずれ、死ぬのだ。
 終わるのだ。

 その理を超える術は、確かに存在しているのに――

「目を背け続けるか……馬鹿な奴」

 呟いた言葉は彼に対してなのか、目の前の神子に対してなのか――
 分かろうとしないまま、ユグドラシルは瞼をとじた。

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